相談者は女性とその親族―。数年前に夫が友人の連帯保証人になって負債を抱えて以来、日々の生
活は困難を極めていました。生活費は足りず、消費者金融とヤミ金から借入をするまでになってい
ったといいます。相談者の女性も住み込みで知り合いの仕事を手伝うようになり、自宅には週に 1
度戻るだけでした。夫も他県へ出稼ぎに行っているため長期の不在。子どもは常に一人でアパート
の部屋で過ごしていました。日常的に両親が不在の中、小学生の幼い子どもは自宅に常備されてい
るカップめんやレトルト食品を食べて過ごしていたといいます。しかし、次第にそれだけでは空腹
と寂しさを満たせなくなった子どもは、一人でスーパーに出かけては万引きし、補導されるという
流れを繰り返すようになりました。そのうち子どもは学校を休むようになり、無断欠席と子どもの
変化に違和感を感じた学校側が児童相談所に通報。児童相談所の職員が自宅を訪ねたところ、一人、
荒れ果てた部屋の中で過ごしている子どもが発見されました。発見時、子どもは入浴もしばらくし
ていない様子で汚れた衣服を着て、やせ細っていたといいます。
後日、相談者の女性と夫には「育児放棄」の疑いがあるとして、子どもは両親から離れて児童養護
施設で養育するべきという判断が下されたとのことです。
今回の相談は、子どもの親権が児童養護施設の施設長に移り、児童養護施設で養育されることを受
け入れられない女性とその親族からの相談でした。既に行政が介入する深刻な育児放棄の実態が認
められている以上、駆け込み寺で直接介入することは困難でした。相談者が自ら弁護士に依頼し、
行政に掛け合ってもらうよう相談するしかありません。しかし、それで子どもの親権が戻ってくる
可能性は薄いでしょう。たとえ「貧困」であったとしても、一概に児童虐待や育児放棄に繋がるわ
けではありません。ただ、子どもを取り巻く貧困が、その後の人生に大きな影響を及ぼす問題とし
て深刻化していること、身近な問題であることも、注視しなければならないでしょう。
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