雇用形態が多様化すると共に、仕事に関わる相談も以前より複雑化していることが伺えます。今月特に目立っていたのは「仕事に関する問題」です。
エステサロンを経営する A さんから「入社したばかりのスタッフ G さんに悩んでいる」との相談を受けました。「G さんは入社して 2 か月経った頃から勤務態度が悪化し、周りの目を盗んでは仕事をサボるようになった。G さんがいるだけでサロン全体の士気も下がってしまう。オーナーの私が注意をしても従わない」、と困り果てた様子でした。A さんは当初 G さんを個室に呼んで注意・指導するなど、G さんの立場も配慮しつつ改善を促していたそうです。しかし、それ以降も一向に態度を改める様子が見えなかったため、このままでは店の行く末にも関わると判断した A さんは、スタッフ全員が揃う朝会で意識啓発の意味も込めて G さんを注意したそうです。すると G さんは逆上し、『パワハラで訴えます!』と言って帰ってしまい、それ以降無断欠勤を続けているとのことでした。それ以来、A さんは「G さんから訴えられるのでは?」という不安に加え、「サロンについてネットなどで誹謗中傷を書き立てられるのでは」ということを懸念していました。現代は、個人が SNS を使い情報を共有することが可能な一方で、一度誤った情報が拡散されると、企業や個人にとって将来にわたる大きな損害を受けかねない危険性があります。
この場合、仮に G さんが A さんを訴えたとしても“A さんから受けたとされるパワハラの「証拠」があるのか”“その証拠によってどれだけ立証できるか”、“それにより G さんがどのような被害を受けているのか”が鍵になります。その上で、A さんには一度 G さんと電話で話し合うことを勧めました。その際は IC レコーダーなどでその会話を録音するようにし、「どういう点がパワハラだと思ったのか教えてほしい」と伝えた上で、「改善できる点があれば改善したい」と考えていることも伝えるよう助言しました。しかし、実際の電話では G さんは A さんの発言に対し無言のまま電話を切ったそうです。数日後、A さんのもとに G さんから「パワハラによる慰謝料請求」の書面が内容証明で届きました。書面に書かれていた内容には、A さんの身に覚えの無いことも書かれていたそうです。
最終的に A さんは弁護士を通して G さんとの話し合いを進めることに決めました。その際にも IC レコーダーの音声記録が役に立ったといいます。一方の G さんは立証できる証拠を持っていませんでした。弁護士を介した交渉は、Aさん側が慰謝料として退職手当を提示する代わりに、G さんには退職に同意してもらうよう進めていきました。最終的に G さんは退職に同意し、今後も一切 A さんのサロンに関する誹謗中傷を行わないという誓約を交わし、両者は円満に解決したということです。
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