駆け込み寺では、毎年冬になると「ホームレス」に関わる相談が増加します。
先日、20代後半の男性が相談にやってきました。男性は大学卒業後、東北の実家から上京し、都内のアパートで一人暮らしをしながらアルバイト生活をしてきたそうですが、度重なる家賃滞納により数日前に強制退去となり、たまたまネットで見つけた駆け込み寺に相談に来ました。そして、「今朝、路上で寝ている間に財布を盗まれ、一銭も金がない。」と言います。それを聞いた相談員は、「今日は休日なので役所は閉まっている。民間の関係機関に連絡し、今日はひとまずそこで寝泊りさせてもらうのはどうか。そして、明日の朝一番で役所へ駆け込み、保護してもらうと良い。支援を受けながら就活して、自立を目指しましょう。」と、本人の意志確認をしました。しかし、この男性は自らの要望を一切明確に話さず、相談員が関係機関に連絡を入れている最中も、何故か相談室のテーブルに突っ伏して終始ふてくされた様子でした。
その後、“幸運なことに”ある団体が「最寄駅まで迎えに行く」と申し出てくれたため、その旨を男性に伝えたところ、不機嫌そうに顔を上げ、「金はくれないんですか?俺に死ねってことっすね。いいです、もう死にます」―。そう言い放ち、相談室の椅子を蹴飛ばして出て行きました。この男性は、ポケットにタバコとライター、携帯用タブレット端末を所持しており、お金は持っている様子でした。
このように、健康面や収入面で問題がなく、所持金があるにもかかわらず、それらを隠した上で金銭・住居提供を受けようとする、「自称ホームレス」と呼ばれる方が増えています。
しかし実際には“何らかの事情”があり、住居や仕事をなくした方が再出発を目指して生活を立て直したい、という内容が多くを占めています。例えば“だいぶ前に刑務所から出所して就職したが、そこを辞めてから就職先が決まらず、所持金もない。すぐにでも住居と仕事を決めて働きたい”というような「不運なできごと」が重なった結果のご相談がほとんどです。長年ホームレスとして路上生活を送っていた人が相談に来ることは滅多にありません。駆け込み寺では寒空の下で途方に暮れている方々の悩みに真剣に向き合い、共に解決の道を探る支援をおこなっています。
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